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FRI’s eye:ワンダーフェスティバル2016

2016.05.04

みなさん「ガレージキット」をご存知でしょうか?

企業が工場などで大量生産する物ではない、アマチュアを中心とした個人や小規模のグループが製作した少 量生産の模型(フィギュア)のことです。このガレージキットを展示・販売するイベントの中で、5万人以上の入場者を集めているのが『ワンダーフェスティバ ル』です。

今回は2月7日に開催されました『ワンダーフェスティバル2016[冬]』のレポートをお送りします。



1984年の発足時は、怪獣などのジャンルが中心だった『ワンダーフェスティバル』ですが、近年では美少女系フィギュアが多く出展されています。今回もア ニメやゲームで人気の『ラブライブ!』や『艦隊これくしょん』のキャラクターフィギュアが数多く見られ、人気の出展ブースではイベント開始早々に完売して しまったようです。美少女系以外ではロボットや宇宙戦艦などのメカ系も人気のジャンル。今回はタイミングの問題もあって人気の偏りは見られませんでした が、近年リメイクされた『宇宙戦艦ヤマト2199』や根強い人気の『装甲騎兵ボトム ズ』、新作アニメの放映を控えた『銀河英雄伝説』などが注目タイトル。特撮系では、こちらも根強い人気の『ゴジラ』シリーズが目を引きます。歴代ゴジラの 造形を巧みに再現したフィギュアはもちろん、実際に映画の撮影にも使用できそうなゴジラやモスラの大型展示は多くの人を集めていました。



出展される作品にはそのときの流行に合わせた人気の傾向がありますが、あくまで個人の製作物が大半を占めるため、昔の作品や特別大きな人気のない作品が出 展されているのも面白いところ。10年以上に渡って同じ作品をテーマに出展を続ける人や、オリジナルのキャラクターを立体化した出展者もいるのがイベント の特徴となっています。
また"アマチュアや個人が製作した"と聞くと、市販の物より完成度が落ちるのではないかと思う方もいるかもしれませんが、それは大きな勘違い。作り手によ りクオリティの差はありますが、中には商売ではないからこそ採算度外視で制作できたり、工場での大量生産が到底不可能な細部まで作り込まれたフィギュアが 多数誕生しているのです。こうしたフィギュアと出会えるのが、『ワンダーフェスティバル』の最大の魅力といってもよいでしょう。

また、『ワンダーフェスティバル』では、アマチュアに限らずメーカーやコンテンツホルダーも出展する「企業ブース」もあります。こうしたメーカーのブース では、新作フィギュアの発表会や現在制作中のフィギュアの原型の展示、さらには会場限定商品の販売なども行われ、近年ではこちらを目当てにした入場者も増 加しています。こちらでもやはりアニメやゲームで話題の"今が旬"のキャラクターが人気の中心。中でもグッドスマイルカンパニーのブースに展示された 『ガールズ&パンツァー』に登場する実物大の戦車には人だかりが絶えず、会場で限定販売された可動式フィギュアの『figma あんこうチームセット』は早々に完売してしまう盛況ぶり。
アニメ系以外では、やはり『ウルトラマン』シリーズや『ゴジラ』などの怪獣モノは定番と言えます。中でもワンフェスを主催する海洋堂の"ソフビ人形"が持 つ圧倒的な存在感は、昔のオモチャしか知らない世代には驚愕のクオリティ。同社の「メガソフビアドバンス」シリーズ最新作のアフリカゾウは、ソフビ人形を 通り越して本物と見紛うほど。
企業ブースの中で一風変わっていたのは、4月から始まる新作アニメ『マクロスΔ』のブース。新作アニメの特別映像上映会やキャラクター商品の販売だけでなく、"歌"がひとつのテーマとなっている『マクロス』シリーズらしくカラオケ大会を開催していました。

企業ブースのエリア内にはイベント開催用のステージがあり、アニメの発表会や公開イベントが開催されるなど企業側も『ワンダーフェスティバル』をプロモー ションの場として活用しています。こうした個人の出展だけでは見られない、華やかなイベントが行われることも『ワンダーフェスティバル』に多くの人が集ま る理由のひとつと言えそうです。



このほか会場の外周にはコスプレコーナーが設定されており、この『ワンダーフェスティバル』では多くのイベントで禁止されている刀や杖、銃といった「長物 (ながもの)」の持ち込みが許可されているのが特徴です。大剣を背負った剣士やカラフルなステッキを手にした魔法少女など、コスプレの再現度を高める小道 具の作り込みも見どころとなっています。こうした光景は、造形物の展示・即売会から始まった『ワンダーフェスティバル』らしい特徴と言えるでしょう。



さて、ファンが製作したキャラクターグッズの売買が行われるイベントということで、著作権や商品化権の問題について疑問に思われる方もいるかもしれませ ん。これらの問題解消のため、『ワンダーフェスティバル』から生まれたのが「当日版権」と呼ばれるシステムです。これはオリジナル以外の他者が権利を持つ コンテンツの製作物を出展する際、事前に届け出をすることで主催者が一括して著作権・商品化権を持つ版権元へ交渉を行い、許諾が得られた制作物に限り「イ ベント開催日の会場内限定」での展示・販売を行うことができるというものです。このシステムによって版権元の権利を侵害せずにファンが創作活動を行えるよ うになり、現在ではほかのイベントでも採用されるようになっています。

『ワンダーフェスティバル』の会場を見て回ると、日本の市場がファンとメーカー双方が協力してコンテンツを盛り上げていることを改めて実感させられます。 なにより「自分はこの作品が好きだ!」という思いにあふれた展示物を見ているだけで、なんだかエネルギーをもらった気分になるから不思議です。次回の『ワ ンダーフェスティバル』は2016年7月24日に幕張メッセで開催を予定しています。ご興味のある人はぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。



本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。